聖書箇所:創世記9章8-17節
❶ ノアの箱舟の物語は、映画にもなって、昔のと最近のと2回観ました。一度目は「創世記」の名場面をオムニバスにしたものです。その時はCGはありませんから、ノアの箱舟の洪水は大量の水を流す大がかりな撮影になったそうです。二度目はノアの箱舟の物語だけをCGで作ったものですが、一度目のようにたんたんと聖書物語だけを描いたものではなく、聖書とは違う話みたいで、かなり脚色されていました。
映画でも繰り返し作られるノアの箱舟物語は、何を意味しているのでしょうか。それは「滅び」と「救い」です。天地創造の神による「滅び」と「救い」です。天地創造の神は、地上が人類の悪に満ちていくので滅ぼすことにされました。しかし、救いも用意されたのです。
エデンの園でアダムとエバが堕落した後、人類の堕落はひどくなり、神は怒って、いったん、人類を滅ぼすことにされました。また、人類によって治められる大地の生き物をも滅ぼすことにされました。しかし、神は、ノアに箱舟を作ることを命じて、箱舟に入ったものを救って、天地創造の仕切り直しをすることにされました。
そして、 神の怒りが表された大洪水の後、神はノアと契約を結んで言われました。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。」(創世記9:12~13) 。
❷ 虹は何を意味しているか、旧約聖書を説明してくれる新約聖書で明らかにになります。新約p432 Ⅰペトロ3:20.21「この箱舟に乗り込んだ数人、すなわち八人だけが水の中を通って救われました。この水で前もって表された洗礼は、今やイエス・キリストの復活によってあなたがたをも救うのです。」。
洪水の水は、人類と大地を滅ぼす水でしたから、「この水で前もって表された洗礼」は、罪を滅ぼすことを意味していました。そこで神は、キリストによる洗礼を受けた者は罪滅ぼしが終わっているとみなされます。さらに、水の中から浮かび上がった箱舟は、死人の中からよみがえったイエス・キリストの復活を思わせます。すなわち、キリストに結ばれることが、滅びからの救いです。
洗礼は、教会への入会儀式ですが、キリストによって罪滅ぼしをしていただくことと新しい命をいただくことを意味しています。つまり、洗礼式とは、キリストの十字架と復活に結ばれる儀式です。
神と大地の間には、人類の罪によって黒い雲が鉄のカーテンのようにありましたが、大洪水のあと、その雲を貫くように虹が現れました。そこで、虹は、罪の罰が済んだあとの平和のしるしです。ですから、虹は、天と地を結ぶ平和の架け橋であり、神と人を結ぶ和解のしるしです。よって、虹は、イエス・キリストを意味しています。神と大地の間に立てられた契約のしるしは、神に罪人をとりなす仲保者イエス・キリストのしるしです。
❸ ノアの箱舟物語は、滅びの中に救いが用意されていることに希望が有る、という意味があります。そういうわけで、聖書の始めの方に出てくるノアの箱舟のお話は、ただ大昔の出来事を語っているだけではなく、過去・現在・未来、すべての人に当てはまるメッセージを語っているのです。
人類と大地は神の怒りの下にあり、神が用意された救いに入らない者は、滅びを免れません。滅びと救いの希望、これがノアの箱舟のストーリーが持つ意味です。滅びの中に与えられた希望は、神の契約に基づく「約束の助け舟」です。すべての時代のすべての人に当てはまる、神のメッセージです。
旧約とは旧い契約、新約とは新しい契約で、旧約聖書は、神の約束がやがて果たされることをモデルにして描いたものです。新約聖書は、神の約束がキリストにおいて果たされたことを記したものです。そこで、箱舟はキリストの教会のモデルだった、と言えるのです。十字架の付いた教会を見たら、「救いの箱舟だ」と思ってください。その希望は、天地創造の神が救い主であるという約束に基づく確かなものです。
決して沈まない船とは何でしょう? タイタニック号のように大きな船の沈没は多くの犠牲者を出します。ノアの箱舟も大きな船でしたが、決して沈みませんでした。なぜでしょうか。木で造った木造船だったからでしょうか? いいえ、昔、日本から中国に渡った遣隋使や遣唐使の木造船はずいぶん沈みました。
ノアの箱舟はなぜ沈まないのでしょうか。虹という天からの命綱が付いているからです。➞ 新約p196(ヨハネ14:6)。虹は天国への道ですが、イエス・キリストは言われます。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。」。この言葉が天地を結ぶ命綱です。
熊田雄二引退教師
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